大阪大学(大阪府吹田市)が発信する「デザインの力による真の世界平和実現」を目標に掲げた「Peace-Keeping Design=PKD」プロジェクトの成果発表会が4月17日、同大学中之島センター(大阪市北区中之島4)で行なわれた。
同プロジェクトは、同大学大学院先端デザイン学際化戦略サイト川崎和男先端デザイン研究室と、同大学医学部附属病院未来医療センターとの協力体制のもと進行するもので、飢餓や貧困、感染症など、地球規模で起こるさまざまな課題を対象としている。川崎教授はデザインディレクターとして、眼鏡やコンピューター、ロボット、原子力エネルギー、人工臓器、先端医療、宇宙空間の装置化など幅広く研究、教育、実務活動を行なっている。
当日は川崎教授がプロジェクターを用い、3つのプロジェクトを紹介。2つは発展途上国における感染症問題を解決するために設計されたワクチン接種のデザインシステム提案で、1つめはパッケージと注射器が一体になったもの。使用済みか未使用かがわかる仕組みや、パッケージに使用方法のイラストを施すなどの工夫が施されている。2つめは、直感的でわかりやすい操作方法と針の収納を実現する革新的なデザインのシリンジ(注射器)。
3つめは、災害時用のトリアージ(負傷者選別タグ)の提案で、現状4段階で分類が行なわれているものを、「死亡」「要治療群」「軽処置群」の3段階で検討。ICタグを実装したペンダントスタイルにし、情報管理システムの革新と機能性の向上を目指している。このトリアージはすでに生産工場も決まっており、「これからICタグ会社を選別するところ」(川崎教授)だという。「現在のトリアージのコストを半分に抑え、全世界共通のトリアージにすることを目指す」とも。
同プロジェクトでは製品を作るだけでなく、「製造」「運搬」「保存・管理」「使用」「回収」までのトータルシステムデザインを提案、運搬・保冷の両性能を向上させる保管型キャリーケースや、飛行機、船舶、パラシュート輸送に効率的なサイズでの運搬用ダンボール設計なども行なっている。
製品の説明を終え、同教授は最後に「デザインだけが世界を革新する、世界平和をつくりだすのはたったひとつデザインのみである」と話し、発表会は終了した。
パッケージと注射器が一体になったキット(関連画像)Peace-Keeping Design大阪大学医学部附属病院 未来医療センター大阪大学中之島センターROBOTがテーマの国際デザインコンペ、大賞は「Mobile Eco-Robot」(梅田経済新聞)