近世にキリスト教・蘭(らん)学から影響を受けた日本美術を展示する「交流の軌跡-初期洋風画から輸出漆器まで」が10月12日、大阪の中之島香雪美術館(大阪市北区中之島3)で始まった。
16世紀中期、キリスト教宣教師が布教のために日本人を指導し描かせた宗教画に始まる「洋風画」。西洋の銅版画を原図に、西洋絵画の技法を習得しながらも、日本古来の表現方法や道具を使って描かれており、異国情緒が漂う。同館所蔵の重要文化財「レパント戦闘図・世界地図屏風(びょうぶ)」と、原図の「ザマの戦い」の銅版画を並べて初展示するのが、同展の大きな見どころ。
鎖国により西洋との表立った交流は途絶えていたが、8代将軍徳川吉宗の洋書解禁により西洋の学術「蘭学」が学ばれた。蘭学者の平賀源内と交流のあった司馬江漢(しばこうかん)は、蘭書の挿絵を原図に洋風画を描いた。宗教色が無くなり、絵師独自の表現が生まれ始めたのがこの時代の洋風画という。
会場では輸出漆器の変遷も知ることができる。安土桃山時代に好まれた幾何学模様の蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)で覆った箱型の漆器や、江戸時代中期に銅版画の原図を蒔絵や螺鈿で描いた壁掛け型で絵画のような漆器も展示する。
館長の勝盛典子さんは「洋風画とその原図である銅版画や関連資料を比較して見ることで、背景や歴史を知って、作品を理解できたと感じてもらえたら」と話す。
開館時間は10時~17時。入館料は、一般=1,000円、高校・大学生=600円、小・中学生=300円。月曜定休(祝日の場合は火曜)。12月8日まで。