近畿大学(東大阪市)は12月3日、来年4月下旬開業予定のうめきた・グランフロント大阪の中核施設「ナレッジキャピタル」に、研究・育成した養殖魚を提供する「近大卒の魚と紀州の恵み 近畿大学水産研究所」を出店すると発表した。
企業とユーザーの新しいコミュニケーション空間を作り出すナレッジキャピタル内「フューチャーライフショールーム」に出店する同店。6階の健康と食をコンセプトとするフロアに、日本初の大学直営専門料理店が誕生する。経営はアーマリン近大、企画・コーディネートはサントリービア&スピリッツ、店舗運営はダイナックに委託する。
1948(昭和23)年、和歌山県白浜町に臨海研究所(現・水産研究所)を開設し、現在までに18種の種苗生産を世界で初めて達成した同大。2002年にはクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功し、「近大マグロ」の名で注目を集めた。記者発表に登壇した世耕弘成理事長は「近大マグロはどこで買えるのか、どこで食べられるのかという問い合わせが多いが、研究で育てているため数が少なく一般に流通するのは難しい。しかし、そうした関心には応えたい」とプロジェクトの発端を説明する。
店内にはカジュアルダイニングに60席、個室ゾーンに40席を設け、ファサードは気軽に入りやすい雰囲気を演出。ランチには近大マグロ丼や煮魚、焼き魚定食、ディナーには刺し身や研究所のある和歌山の食材を使ったメニューを企画する。店頭でマグロを解体し、カマの裏側など普段あまり食べられない部位も提供するという。近大マグロは百貨店などで高値で販売されているが、「直営なので天然マグロと差がない値段で提供したい」と世耕理事長。想定客単価は、ランチ=1,000円、ディナータイム(カジュアルダイニング)=3,500円~4,000円、同(個室ゾーン)=5,000円~6,000円。
カウンターにはタブレット端末などを設置し、トレーサビリティー情報も発信。カウンター内には生産現場の職員が立ち、養殖魚がどのように育ってきたかなどの説明も行う。同大の建学精神「実学教育」に基づき、研究成果を料理で提供するだけでなく、消費者から味や価格の評価を受けたり、研究所以外の学部もインターンシップや商品企画、店内装飾などで参画したりするなど店舗運営の面でも活用していくという。
世耕理事長は「天然ものが良いとされているが、養殖は餌をコントロールできるので安全・安心という点では養殖が勝っている。場合により味も天然よりおいしい」と自信を見せる。