グラフィックデザイナー・宣伝美術家の東學(あずまがく)さんが墨で描いた「花魁(おいらん)シリーズ」を展示する「東學 墨画展『天妖』(ぼくがてん『てんよう』)」が6月26日から、HEP HALL(大阪市北区角田町 HEP FIVE 8階、TEL 06-6366-3636)で開催されている。
舞台美術家の池田ともゆきさんによる構成の「現代の遊郭」を表現した会場には、「赤い柵の向こうから墨画の花魁たちがほほ笑みかけるという試み」(同展担当者)で、天井からつり下げた赤い角材を遊郭の柵に見立てている。生け花は、東さんのエロチシズムの世界に共鳴した花道みささぎ流家元・片桐功敦(あつのぶ)さんの作品で、400本のユリを使用。花びらをひもで縛る斬新な手法で、「女たちの天国と地獄」を表現しているという。
東さんは1963年京都府生まれ。幼いころから絵筆に親しみ、14歳から3年間米国に留学。1983年ごろからグラフィックデザイナーとしての頭角を現した。小劇団ブームが起こった1980年代ごろには、当時関西の小劇団で活躍していた俳優の古田新太さんや生瀬勝久さんらが出演する演劇のチラシやポスターのデザインも手がけた。宣伝美術家として、現代演劇や古典芸能、クラシック音楽など幅広いジャンルのデザインを手がけ、作品は200種類を超える。
一方で現代絵師としての活動も注目され、2004年にはインテリアデザイナー・森田恭通さんが手がけるジャパニーズ・ダイニング「MEGU」のニューヨーク店・香港店の装飾画の制作を依頼された。
同展担当者は「20代の演劇ファンを中心に、東さんの生き方にあこがれる同世代の男性など、大阪にはコアなファンを多く持つ。気さくな人柄で人を大切にするので自然と人が集まる」という。「『関西にいても頑張れば東さんのように活躍できる』ことが、若手クリエーターにとってひとつの目標になっている」とも。
同展は、昨年12月に発売された初の作品集「東學 墨画集『天妖』」(PARCO出版、59,850円、限定500部)の出版を記念するもので、画集に収めた作品の原画約30点のほか、今秋オープン予定の「MEGU ロンドン店」の装飾用に新たにに制作した15作品を初公開する。会場で作品集の販売も行う。
開催時間は11時~21時。入場無料。今月29日まで。