プレスリリース

【摂南大学】「第2回関西テックプラングランプリ」大和リース賞を受賞

リリース発行企業:学校法人常翔学園

情報提供:

 摂南大学(学長:久保康之)住環境デザイン学科の 川上 比奈子教授、生命科学科 松尾 康光教授、瀬溝 人生助教は、科学技術と情熱をもって関西から世界を変えようとするチームを発掘・育成することを目的に開催された「第2回関西テックプラングランプリ」に参加。植物の光合成を利用した光バイオ燃料電池を建築素材に一体化させ、水素エネルギーと酸素を作り出す「光合成建築」についてプレゼンテーションを行いました。その結果、会場投票1位を獲得し、企業賞である大和リース賞を受賞しました。

【本件のポイント】
・「第2回関西テックプラングランプリ」で川上教授、松尾教授、瀬溝助教のチームが
 大和リース賞を受賞
・世界で初めて、植物の光合成によるLEDランプの点灯に成功
・「建てる建築」から「植える建築」を目指し光合成パネルを活用した建築デザインを考案



画像左:(左から)大和リース大阪本店 副本店長 萩田 一氏、摂南大学 川上教授、松尾教授、瀬溝助教 
画像右:光合成建築についてプレゼンテーションをする川上教授(右)

【大和リース賞】
チーム名:光合成建築プロジェクト 発表者:川上 比奈子
テーマ:「光合成建築」
    ~酸素・エネルギーを生成する空間デザイン~






■「関西テックプランター」概要
 リバネスが主催する「関西テックプランター」は、関西エリア(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県)発の、世界を変えるような革新的な技術やアイデアの実現を応援するプロジェクトです。
■「第2回関西テックプラングランプリ」で光合成建築をプレゼンテーション
 川上教授のチームは、2024年に開催された「関西テックプランター」に参加し、28組の中からファイナリスト12組に選ばれ、11月16日に開催された「第2回関西テックプラングランプリ」で、企業賞として大和リース賞を受賞しました。大会では、川上教授と松尾教授のチームが開発した「光合成建築」について発表。その結果、会場の投票でも1位を獲得するなど注目を集めました。リバネスおよびパートナー企業によって構成される審査員により、1)新規性 2)実現可能性 3)世界を変えそうか 4)パッションがあるかの4つの項目を基準として審査が行われました。
■光合成建築とは
 光合成建築は、自然の光合成プロセスを建築設計に取り入れた建築コンセプトです。伐採樹木や廃棄植物の葉緑体による光合成を利用した光バイオ燃料電池を、窓・壁・屋根など建築構成材に一体化したもので、水素エネルギー、酸素、緑色に彩られた美しい空間を同時に創出します。
 「人工光合成」とは異なり、植物そのものの光合成を活用した提案で、国内外の技術展でも大きな注目を集め、サスティナブルな社会の実現に貢献する技術として高い関心が寄せられています。




光合成建築に使用される廃棄

・住環境デザイン学科×生命科学科 2つの研究室が融合

 住環境デザイン学科でインテリア・建築デザイン史の研究をする川上研究室と、生命科学科で共生機能材料学の研究をする松尾研究室が融合して光合成建築の研究に取り組んでいます。世界で初めて植物の光合成から電気エネルギーを生み出すことに成功した松尾教授との会話から、川上教授が建築に応用できるのではないかと考え付いたのが研究のきっかけとなりました。
 研究では、川上研究室が主にデザイン分野を、松尾研究室が科学分野を担っています。それぞれの専門性を生かし、学生は燃料電池の構造や葉緑体溶液の組成の最適化、光合成パネルや窓の製作、そして生成エネルギーの計測といった重要な研究に取り組んでいます。

・光合成燃料電池のメカニズム
 植物の葉緑体に含まれるチラコイド膜から「光化学系II複合体(PSII)」のみを抽出し、光合成によって酸素、水素イオン、電子を生成させ、光エネルギーを電気エネルギーに変換。再生可能かつ環境調和型素材による新しい光バイオ燃料電池です。3センチメートル角のPSII溶液を入れたキューブ4つで、1カ月以上安定してLEDライト点灯や時計を動かすことができます。




光合成燃料電池で動く時計

・建築への応用~「建てる建築」から「植える建築」へ~
 再生可能エネルギーに関する研究は多く行われていますが、光合成で水素イオンを発生させて電気エネルギーに変え、酸素を生み出し、緑色の美しい空間を作り出せる、という3点を同時に可能にしているものは他にありません。川上研究室と松尾研究室では、実際にびょうぶや窓に活用する光合成パネルを作成。屋根やひさしに光合成パネルを活用した、集合住宅やバス停などの建築デザインを考案しています。
 川上教授や松尾教授は光合成建築の研究において、建築に関して「建築を建てる」のではなく「建築を植える」という概念に移行し、緑との共生に少しでも寄与することを目指しています。そこには、人間が生きるために植物を廃棄せざるを得ないのであれば、その廃棄植物から微量であってもエネルギーを作り出して自然への負荷を抑え、酸素は自然へ還元したいという思いがあります。



光合成パネルを屋根と庇に活用した集合住宅建築の模型


・実用化に向けた動き

 本研究では、2022年夏に大林組との実証実験を行うなど、実用化への具体的な道筋を探ってきました。LEDキャンドルや時計などのインテリアアクセサリーから、バス停シェルターや集合住宅建築まで、幅広い分野への応用可能性を追求しています。更に、「第2回関西テックプラングランプリ」において大和リース賞を受賞したことを契機に、新たな共同開発に向けた取り組みが動き出しています。

関西テックプランター2024:https://techplanter.com/kansai/2024/
大林組 光合成建築:https://www.obayashi.co.jp/makebeyond/gallery/photosynthetic-architecture-cm-30/

▼デザイン提案例















■コメント
●川上 比奈子教授 ~光合成建築プロジェクトに携わる思い~
 サイエンス分野とデザイン・アート分野がドッキングできたからこそ創り出せたことに大きな喜びを感じています。太古から植物のおかげで私たち人類が生きてこられたことを再発見し実感できるよう、緑との親和性を大切にしたデザインを心掛けています。学生たちは光合成建築プロジェクトの未来の可能性をそのみずみずしい感性で直感的に理解しているようです。「自らが主体的に課題を発見し研究し創作する」という大学生の本来の姿を日々、目の当たりにできることは、教員としてこの上ない幸せと感じています。

●松尾 康光教授 ~研究内容の実用化に向けて~
 光合成のエネルギーによるLEDランプの点灯はこれまで研究してきた物理・化学・生物が1つにつながる瞬間でした。このサイエンス分野が集約した「世界初の現象」を誰よりも早く見られたのは何にも代えがたい経験でこの上ない喜びです。これまで32年間、光電池、燃料電池、バイオマテリアルの基礎研究を行ってきましたが、これらが「光合成建築」という融合共同研究によって実り、実用化へ急速に近づいています。学術分野だけでなく、地域・産業界とのさらなる分野の融合を見据え、次世代を豊かにするサイエンス&デザイン&テクノロジーの実現を目指します。

●瀬溝 人生助教 ~受賞に対する思い~
 この度は、このような素晴らしい賞を頂戴し光栄に思います。光合成建築プロジェクトのさらなる発展へのご期待に対して、身が引き締まる思いです。光バイオ燃料電池および光合成建築について広く発信するために、学会発表や英文雑誌への掲載といった取り組みを引き続き行っていくとともに、光合成建築プロジェクトの社会実装に向けてより一層取り組む所存です。

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