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阪急三番街の「梅田ナカイ楽器」閉店へ 施設開業時から残るテナント

梅田ナカイ楽器の片山十三男社長

梅田ナカイ楽器の片山十三男社長

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 商業施設「阪急三番街」開業時から残るテナントで老舗楽器店の「梅田ナカイ楽器」(大阪市北区芝田1)が9月30日で閉店する。

「これからも楽器には関わっていきたい」

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 施設開業の1969(昭和44)年11月に営業を始めたテナントがまた一つ姿を消す。
 店舗面積は76平方メートル(23坪)ほど。店内には所狭しとギターやマンドリン、バンジョー、シンセサイザーなどの楽器が並ぶ。ショーウインドー一面に飾られたギターに、足を止めて見入る人も多い。

 初代社長の中井昇さんがアメリカで「ブルーグラス」に出合ったのが創業のきっかけ。1963(昭和38)年10月、1号店を梅田地下センターのおしゃれ北コーナーに開いた。最盛期には阪急グランドビルや、かっぱ横丁にも店を構えたが時代とともに縮小。最後の1店を閉めて、56年間続いた会社を解散することにした。

 1985(昭和60)年に高校卒業と同時に入社し、34年間同社に勤めてきた三代目社長の片山十三男さんは「2~3年前から、何とか持ちこたえてきた状態だった」と明かす。「若い人はたいていインターネットで買ってしまう。店がショーケース化し、対面接客に限界を感じた」という。動画配信サイトなどで気軽に音楽に触れられる時代、「誰もが憧れるようなカリスマミュージシャンの不在も大きい」とも。

 店にはこれまで山下達郎さんなど著名ミュージシャンも多く訪れた。ツアー中の織田裕二さんが「大阪流」の値引き交渉に挑んで失敗し大笑いしたり、さだまさしさんがメガネをかけずにフラリと来店し、軽妙洒脱な振る舞いで周囲を魅了したりした。

 過去には、クレジットカードを持てない北新地のミュージシャンに店の貸しで割賦払いにしていたこともある。「購入したことが母親に知れると怒られる」という学生を少しカモフラージュして手助けしてあげるような、人情を大切にした店だった。

 最盛期は1985年~1990年代頃。バブル景気の真っただ中で、ポップからロック、ダンスミュージックまでカリスマミュージシャンたちが躍動した。「『飛ぶように売れる』とはこのことか、と思った」(片山さん)という。

 片山さんは「やっぱり私は音楽が好き。楽器の相談を受けてきて、やめられると困るという人もいる。何らかの形で、これからも業界に関わっていきたい」と話す。

 営業時間は10時~21時。

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