大阪くらしの今昔館(大阪市北区天神橋6、TEL 06-6242-1170)で7月13日、企画展「ミュシャ くらしを彩るアール・ヌーヴォー」が始まった。
アール・ヌーヴォーのポスター作家として知られるアルフォンス・ミュシャの作品が「暮らしにどう関わっていたか」を切り口に企画した同展。約150点の作品を5部で構成し展示する。
第1部では、ミュシャの名前を広く知らしめることになった演劇のポスターを展示。印刷所のデザイナーらがクリスマス休暇を取っていた時に偶然居合わせ、任された演劇「ジスモンダ」のポスターが評判になり、主演女優・サラ・ベルナールの目に留まったミュシャ。出来栄えを気に入ったベルナールは約6年間専属契約を結び、舞台装飾や衣装デザイナーとしてもミュシャを起用したという。
第2部では、タバコの「JOB」、「パーフェクタ自転車」、ランスの香水「ロド」などの商業ポスターを展示。商品をクローズアップせずイメージをデザインする当時の手法で描いたポスターは、うねる女性の巻き髪や立ち上る煙など、ミュシャ作品の特徴が表れている。
展示ケース内では、ミュシャが有名になる前に生計を立てていた挿絵作家としての作品や、祖国(現在のチェコスロバキア)に帰国した後に手掛けた切手や紙幣などを展示。レストランのメニューやお菓子のパッケージ、芸術雑誌の表紙など、幅広いアイテムを集めた。
第3部では、印刷技術が発達した当時、1点物の絵画を買うことができない一般市民の間で流行した室内装飾パネルを展示。季節や芸術をいつの時代か分からない服装をまとった女性で表現した神秘的な作品は、商品名を抜いて刷り直し、装飾パネルとして人々の暮らしに広まっていった。
第4部では、アール・ヌーヴォー期のカーテンやソファの張地、家具、家具の引き手金具、陶磁器などを展示。第5部では、デザインを学ぶ学生の教本として配布された、ミュシャの装飾デザインをまとめた図案集や、ポストカードなども展示する。ポストカードは実際に使われたものを展示し、当時の暮らしの中にミュシャの作品があったことを表している。
今月28日には、兵庫県立美術館の新谷式子さんと、同展にポストカードや雑誌などを出品する尾形寿行さんのギャラリートークを開催。8月17日には、ミュシャの絵を使ったオリジナルチャームを作るワークショップも開催する。
開館時間は10時~17時。観覧料は、企画展=300円、常設展とのセット=800円(学生500円)。今月16日・17日休館。9月1日まで。