西梅田の複合商業施設「ブリーゼブリーゼ」(大阪市北区梅田2)1階メディアコートで12月10日、アルスエレクトロニカによる日本初の本格的な展示イベント「Poetry of Motion」展が始まった。
アーティスティックディレクターのゲルフリート・ストッカーさん
オーストリア・リンツに拠点を置き、芸術と科学の融合により社会のあり方を提案し続ける「アルスエレクトロニカ」。1979年に始まったメディアアートの祭典「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」の開催、アートとテクノロジーの最先端を発掘するコンペティション「プリ・アルスエレクトロニカ」の開催、「Museum of the Future(未来の美術館)」として一般人に向けた体験型展示を行う「アルスエレクトロニカ・センター」の運営、専門性を持った人が集まるメディアアート研究所「アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ」の運営の4つを柱に活動する。2006年に関西テレビと包括提携契約を結び、今回日本で初となる本格的な展示イベント開催に至った。
開催に合わせ来日したアーティスティックディレクターのゲルフリート・ストッカーさんは「アーティストが社会とどのように関わるかを重要視しているのが特徴。アートはもはやスペースを訪れる人だけのものではない。公共の場で行うことを重要視している」といい、「今回ショッピングモールでエキシビションができ、日本のアーティストともコネクションを持ててうれしい」と話す。展覧会は同じ作品で巡回するのではなく、会場や来場者など背景を考えて作るという。
エスカレーター前に設置されたモニターでは、リアルタイムで映像を取り込み、人が動くことで葉が落ちるなどリアルとバーチャルを融合させた作品「イノセンス」を展示。「エクスクイジット・クロック」は日常の生活で撮影された数字の投稿からできる時計で、画像を組み合わせて時間を知らせている。
会場の大部分を占める印象的な作品「トゥールアンレール」は10年以上前に作られた作品で、高さ2メートル80センチの3体のドレスが回転し人が踊っているように見えるもの。作者のウルスラ・ノイゲバウアーさんは「回った時のドレスがフワッと上がる瞬間が重要。納得がいくまで1年以上かけた」といい、ほつれた裾には「踊りたくないのに踊らされている、女性に対するトラディッショナルな型」の意味も含めた。
日本人の作品「ハートビートピクニック」は、聴診器を当てるとつながれた黒い箱に鼓動が伝わり振動し、「自分の心臓がここにあることを感じ直す」もの。「シャドウグラム」は影に重みをもたせることができればどうなるかをテーマにした作品。映した影をシールで出力し、「あなたの元気の素は?」をテーマに自分の影のシールとコメントを壁面に張り付け一つの風景を生み出していく。
iPhoneアプリ「アルス・ワイルド・カード」は、それぞれの作品に付けられたQRコードを読み込むとポストカードのフレームを取り込むことができ、面白かった作品を撮影してコメントを付けてアプリ内に保存できる。保存した画像はネット上でシェアでき、プリントアウトをして持ち帰ることができる。「従来の鑑賞の仕方ではなく、来場者が自ら作って持って帰ってもらう仕掛けを作った」という。
ストッカーさんは「参加型がキーワード。ビジターがそれぞれ考え参加することで作品がリッチになる。このタイプの作品が重要で、何かをクリエートする能力を引き出すために作品を作っている」と話す。
開催時間は11時~20時。今月18日まで。